2.施設


認知症(痴呆性)高齢者施設

 先日、別府で開催された日本痴呆ケア学会に参加しました。現在、認知症(痴呆)の問題は家族や関係者だけでなく社会的に大変に関心が高いことを示すように、全国から研究者や施設関係者など熱心な人たちが大勢集まって、湯の街別府のビーコンプラザという立派な会場で連日議論がされました。初日には教育公開講座として別府の隣の大分の市民公園内の能楽堂で講演・シンポジウムが開催され、長谷川先生の講演やシンポジウムでは家族の会の方や施設の方の話のほか芸術活動を取り入れた現場対応の話などがあり、鬱状態だった人などがかなり回復したなど多くの人たちにその効果があることについて説明などがありました。音楽療法などもそうですが、対応していく発想の幅をさらに豊かに広げていく必要がありそうです。

 認知症(痴呆症)において発生してくる問題に関しての配慮点は、本人のさまざまの面における認知をいかに手助けして記憶の糸を辿りやすくするかという点と、身の周りの危険を減らし安全をいかに確保するかという問題だろうと基本的に私は考えています。しかし、施設などでのさまざまの取り組みの試行の中で確かに症状が改善した事例なども聞きますので一概には言えないのですが、異常行動や徘徊など認知症(痴呆症)の症状そのものが他の病気や怪我のように回復するのかしないのかについても、スタッフのケアの質や入居者との相性などとの関連も考えられ、その度合いについてはかなり個別性が高いように考えられます。従って、一般論にするにはまだ確信は無く、その症状のメカニズムについてもまだ不明な部分があり、ましてやその建築的な対応についての解答はこれからの研究分野でもあります。その点では、福祉専門職の人たちと同様に私達建築設計に関わる者の責任は今後益々大きいと感じています。

 近年、認知症(痴呆)高齢者問題は関心が急に高まっている分野でもあり、先に書いたように現在も特養などさまざまな施設で試行錯誤が熱心に取り組まれており、データも確実に増えてきているはずです。とはいえ、スタッフが忙しいせいもあるでしょうが、まだ残念ながら不明な部分が多く私の知る限りではこれといった決定打はないように思います。また、一部には認知症(痴呆)配慮の住まいや施設についての本などを出されている研究者もいますが、殆どがバリアフリー対応が中心となっており、現在のところではさまざまの現場での試行による経験知の対応の蓄積がされている途中状態といって良いのではないかと感じています。

■認知症(痴呆)高齢者施設
■認知症(痴呆)高齢者グループホーム
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