まず、ユニットケアの定義ですが、
「グループに分けてそれぞれをひとつの生活単位とし、少人数の家庭的な雰囲気の中でケアをおこなう」としています。私自身、今までのさまざまの福祉施設の計画の中でユニットケアや居室のグループ化の提案をおこなってきましたが、人数を少なくすることだけで家庭的な雰囲気を作り得るのだろうかという疑問が絶えず頭の中に去来していました。少人数化することの具体的な効果としては、生活の中での選択の自由性が増し、いつも少数の一定の人と接すため精神的緊張が減りコミュニケーションが取りやすくなる点があげられます。また、その状態はむしろ家庭的というより、個室のプライバシー確保や生活の選択の自由性にともなって得られるストレス減少が居住者の生活の質を高めているような気がします。これらはストレス量と密接に関係するという認知症(痴呆性)高齢者ケアにも有効な手法として理解できます。

 
 また、個室化することだけで家族の訪問が増えると考えるのは短絡に過ぎるのではないかと思います。確かに、個室の方が家族の訪問を促すためには気兼ねなく話などもできるために最善の方法に違いないでしょう。しかし、訪問回数の増加を期待するのであれば、施設の立地と家族が訪問したくなるインセンティブの演出について同時に要求されるべきです。訪問回数が増えれば自動的に家族関係は深まるでしょうが、もともと頻繁に訪問する家族は愛情が深い人達です。交通利便な立地でユニットケアを実施し、それに見合うケア体制を創り上げることが、入居者の生活の質を確保する最上の策だろうと思います。しかし、現在のケアスタッフの配置数で対応するにはかなりの無理が生じているのが現実です。もし、ケアの質を問うのであればスタッフの数の見直しも避けて通れない問題です。
 その意味でも、特養などの施設は交通の便などが良く訪問しやすい立地にしなくてはいけない所以であり、ケアスタッフの数を増やすことを同時に検討すべきであると考えています。

  1.ユニットケア

 10人を生活単位の原則としているが、私見としては10人は少し多く、8人が入居者としても生活の仲間としては適当ではないか、また、居室と共用スペースの配分などのバランスからもユニットとしてまとめやすいと考えています。簡単な調理、食事、談話などを通じて交流が図られるようユニット毎の共用スペースを設けることを要求していますが、ユニット内で無理に交流を要求する必要もなく、本人の生活の選択の自由性が増すことによるストレス減少が、入居者に対する最大の効果ではないかと考えられます。

 また、静養室や面会室が不要なのは当然としても、一定の要件の下で廊下幅の見直しをするとしていますが、一定の条件が現時点ではまだはっきりしていません。


 参考例によれば、昨年まで禁止されていたユニット内の通路通過が180度逆転し認められ、分断されたデイルームも良しとしています。この点は厳しい指導があっただけに行政指導としていかがなものでしょうか。聞くところによれば、参考事例施設のデイルームは十分には活用されていないとも聞きます。どのような条件の下での廊下幅を指導するか待たれます。無論、多様な使い方のできる廊下はある意味で必要なことです。また、ケアステーションからの入居者への看守りについても特に指導はありません。しかし、入居者の身体状況を考慮すれば少なくともデイルームへの見通しは配慮されるべきでしょう。そして、最後に浴室の扱いですが、通常の家庭生活を基本として配慮すれば、ユニット内に浴室を組み込むかどうかの判断が分かれるところだろうと思います。しかし、現時点では特養の浴室、浴槽は補助金対象ではなく、これらの費用がホテルコストに反映できるかが、どのように配置可能かの重要な判断基準となってきます。勿論、もし反映できてもホテルコストの総額が入居者の負担可能な限度を超えれば不可能であり、限度以内に納まることが前提となります。

5.地域との係わり
4.施設の住宅化
■ユニットケアとする

■個室化原則
■多様な生活空間
■施設整備費助成
3.費用負担の考え方
1.ユニットケア
2.新型特養の概要