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住まいのバリアフリー10.03.10
平成に入り、多くの人達により、空間、障害、住まい方などのそれぞれの切り口から住まいのバリアフリーの在り方や実施の際の技術的方法論などについて様々のことが述べられてきました。また、国のものも含めマニュアルや解説本なども多く出版されています。これらにより、日本のバリアフリー化も少しは前進の方向へ向かうと期待しておりましたが、当初、私が期待していたような誰でもがその趣旨を理解し当たり前のこととして整備されているというような広がり方はまだしていないように思います。何故、バリアフリー化の定着が遅々として進んでいないのか、改めて、住まいのバリアフリー化について考えてみたいと思います。
周知のことでもありますが、厚生省は平成元年のゴールドプラン策定の中で高齢者問題は住宅問題であるとの認識のもと、在宅にいる高齢者のいわゆる「寝たきり」を無くそうと、「寝たきり0作戦」と銘打ち、住宅を改造し住み続けてきた住まいに住み続けられるようにしようと、住宅改造のための共通のマニュアルを作り、全国に周知させるために各自治体や在宅支援センターの住宅相談窓口に配布し住宅増改築相談体制を整備しました。
また、平成8年にはバリアフリー化を担保した建設省と厚生省による住宅金融公庫と年金住宅融資という公的な住宅融資制度を整備しました。その制度の周知化のため、全国を10箇所の地域に分け関係者に対しセミナーなどを展開し推進体制を整備しました。私も何箇所か講師として飛び回りました。この様に制度としての体制は出来たのですが、その後の民活の推進(それはそれで必要な部分もあると思います)などの考え方による国の役割の軽減化と共に公的住宅融資制度も中止になり、それによって日本のバリアフリー推進カを図るという本来の目的もどこかに消えてしまった感があります。この様な考え方の定着のためには公的な制度の果たす役割も重要だと思うのですが。例えば、平成8年以降も高齢者の家庭内事故数は増加しているのですが、その数と高齢者人口数との比率を見てみると平成8年以降減少傾向を示しており、住宅のバリアフリー化がその減少化に一定の役割を果たしていたのではないかと考えられとても残念な気がします。
また、推進体制述の整備について述べましたが、このような推進体制を維持するためには、つくりっ放しでは衰退するばかりなので、繰り返し次に続く新しい人たちに情報提供を行って次の世代に情報と技術を伝えていく必要があるだろうと思います。この辺が全部ではないにしても放置に近い状態にされており、停滞している原因ではないかと思います。


住まい:
痴呆性高齢者グループホーム(2002.12.10)
 最近、国でも勧めておりあちこちに増えている痴呆性高齢者の住まいとしてグループホームがあります。今のところ、グループホームの実情としては入居定員数がかなり幅広く4〜10人ぐらいのものまであります。民間でも設立が簡単に出来るため、中には問題のある施設もあるように聞きます。しかし、特養などと大きく違うところは身体介助部分が比べて少ないこともあり、関わる専門職の数が少ないところです。従って、ケアの質についてはグループリビングをしている入居者の個々の症状にあわせ良く注意を払って運営していく必要があります。おそらく、グループホームでのケアの仕方は施設で行っているものとはどこかで違うのだろうと思います。
 少人数によるグループリビングについてはそれまで多動だった人が落ち着いて生活できるようになるなど一定の精神安定効果があることは確かなようです。しかし、それが少数の固定したスタッフとの関わりによる精神的な安定が効果をもたらしているのか、入居者が少人数だということがその効果をもたらしているのか相関関係についてはまだ厳密には明確にはなっていないのが現状のようです。さらに、グループホームが複数集まった形態で構成した場合に、特養で行われているグループリビングと何がどのように違うのかといったさらに細かい点などについてはまだ研究中のようです。比べれば、スタッフの数や専門性などの体制が違うのははっきりとしていますが、痴呆症の場合、症状や対応に対する効果を本人に直接に確認することが難しいというハンデがあるため、実際の使用状況から類推するしかない部分が多く、関わる人たちにとっては専門性の問われる大変な分野であることは間違いないところです。施設などで造られている回廊(一つの方法とは思います)などのように徘徊という症状を容認し、やり過ごし見守るだけではない、ケア対応で徘徊を少なくすることが出来ないのかといった、一歩踏み込んだ解決策が求められているのだろうと思います。早く、有効なデータが蓄積されて痴呆性高齢者に福音をもたらすような、システムと施設が用意できるようになればと考えます。


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